コラム男の介護

介護と生きること


 アルツハイマー症の母(87)の介護を父から引き継いで6年目です。治るどころか、進行していくばかりの当ての無い病気ゆえ、賽の河原の石積みを作っては壊す毎日です。生きることの意味や希望をついつい失くしがちです。競争原理や合理性の価値観だけで生きてきた人間にとってこの病と向き合うことはとてもつらいものがあります。正視に耐えません。自分の築いてきた生き方や価値観をさえ捨てないと、対処できない病とはいったい、人間にどんな意味を投げかけているのでしょうか?焦燥を通り越して、虚無感だけが残る日々です。そして、そういう人たちがこの日本に数百万人も居るということに、只々驚くばかりです。

 長生きすることの結果がこれだというのであれば、長寿という言葉も空ろに聞こえます。しかしながら、天から頂いた命は誰も一つっきり、天が命ずるままに最期まで燃やし続けましょう。

前野 英憲さん からのおたよりです。


(更新:2012/04/25)
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