コラム男の介護

誰のための介護施設なのか

京都市 田村権一 59歳 (実父の介護)

 近くにユニット型個室の地域密着型特別養護老人ホームがオープンする。案内の料金表を見て驚いた。要介護5、減額なしの場合、月額18万円、年額にして約220万円かかる。内容を見ると居住費が1日3,200円(13.5㎡)、1ヶ月96,000円と高く、半分以上を占め、高齢者専用住宅及び一般の賃貸住宅と比べ、1㎡当たり、それぞれの2倍、3倍になる。なぜ高いのか施設に尋ねてみると相場だと言うだけで根拠を明らかにしない。社会福祉法人ならもっと透明化すべきだ。
 平成17年10月、介護保険制度が公平という名のもと食費と居住費が保険対象外となり、原則自由契約(市場化)になった。そのときの厚労省のガイドラインには基準費用額として1日1,970円を示している。京都市のすこやかプラン、介護保険事業計画(平成21年度~23年度)には国をはじめ今後ユニット個室化を進めていくと記されている。役所に問い合わせても自由契約だからという回答のみだ。
 果たして、こんな高い個室化が必要なのか。現在多床室でも部屋ごとに仕切ってあり1日320円となっている。私は介護離職し、父を4年間介護しているが、やはり経済的な負担が大きい。標準的な年金生活者(夫婦2人)の年収は300万円といわれている。1人施設に入所すればもうひとりは生活できない。まして国民年金なら利用もできない。
 いったい誰のための介護福祉施設なのか。誰もが利用しやすい介護の社会化としての介護保険制度ではなかったのだろうか。10年目を迎えた介護保険制度は複雑化され、使いづらく問題点が多く出てきている。今こそ、介護保険制度の検証が必要であり、利用者、介護従事者、経営者、それぞれの立場から問題点を出し合い、もっとより良い制度につくり直していかなければならないと痛切に感じる。

(更新:2009/09/12)
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